「FUNKY DRUMMER」

JAMES BROWN  IN THE JUNGLE GROOVE 収録

JBを弧の中心して、ずらり並ばされたバンドメンバー。
メンバーはどの顔も戦々恐々、場には緊張がみなぎる。
「おれがイー、って言うたら、すぐなんかスネア入れて」
余裕のJBがドラマーに、こう指示だけ与え、手振りでカウントを出した。

ドラムパターンが始まる。細かい16ビートはねちこく場を這っていく。
同時にJBのダンスもスタート。
以降、時系列に出来事を追う。

0:17 ドラムだけのファンキー虚無空間に初めてJBの声が入る。はやくもちょっとオッサン笑ってる。
0:27 JBの「ゴー、ハッ」の手振りに合わせ、ギターがチャッ
0:32 再度 JBの「ゴー、ハッ」の手振りに合わせ、ギターがチャッ 緊張感倍増し
0:36 みたびJBの「ゴー、ハッ」だが、ギターがこれを無視。ここで緊張感、急騰!
0:44 JBの手振りに合わせ、ギターが必殺のチャッチャッチャッ
1:03 ダンシングJB、興がのってきて、たまらず「ヘヘッ」と笑ってしまう。続いて「イー!」と叫び、スネアすかさず対応の妙。打ち合わせどおり!
1:50 オッサン、妙におとなしくなる。嵐の前の静けさか?!
2:11 長い沈黙を破り、JB「ヘヘッ」と笑い、ギターがチャッで応える。
2:20 来た!嵐のような「イー」の連呼。ドラムも対応しまくり、曲は一気に佳境へ。
2:40 JB、もう堪忍したろかとばかりに、笑いのまざった最後の「イー!」
2:51 JBのカウントで、ホーンセクションが満を持した一発フレーズで曲を締める

と、こんなふうにレコーディングされた(と思う)。ひょっとしたらJBはひとり、ヤグラみたいなものの上で、踊り、キュー出しをしていたかもしれない。
JBの曲は、このように音だけでななく映像も想像しながら聴くといっそう匂うのだ。


JBバンドといえば、以前TV「ソウルトレイン」で世界で最もしょんぼりしてる男を見た。
JBバンドにはドラマーがふたりいる。そして、この二人、一緒に演奏するのかと思いきや、一曲につきJBに指名されたひとりのみが叩き、結果残されたもうひとりのドラマーはまったくの手持ち無沙汰となる。特に向かって右側のドラマーは、ミスター手持ち無沙汰といった風情でがっくりうなだれ一点をひたすら凝視していた。これほどのしょんぼり顔はそれ以前それ以後とも見たことがない。またJBのハイテンションがいっそうそのしょんぼり感を際立たせる。
このシーンを見てしまった僕は、JBはバンドメンバーには、けっこう辛辣だったのでは、という印象を禁じえない。