「INSTRUMENTAL Ⅱ」

ジェイムス・テイラー/ワン・マン・ドッグ 収録

まずはこのジャケットはどうだ。
10頭身のJTが湖に浮かぶボートの端っこに・・・た、立ってる。チープな船は今にもバランスを失い転覆しそうで、不安気な犬の表情が事の危うさを物語っている。しかも、JTときたらシャツに大きなストライプ柄のネクタイ姿。どこ行くねん、というかどこ行く途中やねん!
「13日の金曜日」のラストシーンもまっさおなインパクトのあるジャケット写真だが、実はこのウラには一転してほっとする写真、すなわちウッディな小屋の中のバンドでのアットホームなレコーディング風景が配され、で、バランスは保たれている。(もっともこのウラの写真でもJTはキーボード奏者を不気味な表情で見つめてはいるのだが)。

さて、このアルバム。僕が思う理想のアルバム像。
その理由として、
①一曲一曲が短い。18曲もあるのにトータルで38分弱。平均して2分ちょっとの曲群だ。短い曲はいい。くどくないし、飽きがこないから。
②バンド編成がシンプル。アコギ、エレキ、ドラム、ベース、エレピ。
③メンバー各人の演奏が必要十分で品のあるアンサンブル。饒舌でないのがいい。たくさんしゃべるより、要点をすこししゃべって伝えるかんじ。特にエレキのダニー・クーチマーのコード感やオブリの入れ方がなごむ
④基本的にリバーブ分が少なくて好き。
⑤ウラジャケット写真にあるような、自然の中の気持ちのいい場所で和気藹々としたレコーディング環境は憧れ。

でもって内容はというと、おだやかなJTの歌と、ギブソンJ-50の素朴な音色を軸に、和む曲が綴れ織り状態となっている。その中にあって、箸休め的にインストとして収録されている「「INSTRUMENTAL Ⅱ」。タイトルからしてシンプル(適当、ともいう)でいい。JTの歌はずっと聴いているとすこし疲れるが、この曲はボーカルなしなので疲れない。そして、この曲で感じられるJTの優しさ、さりげなさ、こだわり、がとても好きだ。アコギにエレピ、エレキギター、ベース、パーカッションが寄り添い、なにも足さない、なにも引かない感じの演奏がとても心地よい。JTのアルバムにはこういう箸休めテイストの曲が必ず入っていて、それが僕にとっての「当たり」。

いつか作りたいな、こういうアルバム。ジャケットも思いっきり真似して。ただし転覆に備え、ズボンの下には海パン着用の上で。