「Some Skunk Funk」

ザ・ブレッカー・ブラザーズ/ブレッカー・ブラザーズ 収録

 

ブレッカーブラザーズのデビューアルバムだが、テーマはドラマーの話。

「スティーブ・ガッドとハービー・メイソンはどっちがすごいか?」という話がその手の音楽好きの間で半期に一度くらい話題になる。ま、なんやかんや意見がでて「ま、どっちもすごいね」で終わることにはなるのだが。だが「どっちが好きか?」では僕の場合、はっきりしてる。僕はハービーが好きだ。

それは何でか、というとハービーのドラミングが僕にとってたまらなくファンキーだからだ。ハービーの粘っこくて、身軽で、適度に粗くて、腰が浮き上がったような、運動神経のいいドラミングが大好きで、僕のi-podには彼がドラムの曲がやたら多い。ハービー自身のリーダー作、ドナルド・バード、クインシー・ジョーンズ、ブラジョン、ジョン・クレマー、ジョージ・ベンソン、ハンコック、などなど。

アルバムしょっぱなの「Some Skunk Funk」。メカニカルでファンキー、タイトなアンサンブルに不安なコード進行。ワクワク感と不安感が四つに組んでラストまで突っ走る怒涛のナンバーだ。
この曲、マイケル・ブレッカーのサックス・ソロがわわっと繰り広げられたあと、ほっと一息つく間もなくホーンセクションのみのリフパート(Time4:02)が待ち構えている。それはさながらパックリ口をあけたエアポケットのように聴く者を一瞬唖然とさせ、さあ、ここからがいよいよこの曲のスリリングな見せ場となるのだ。

さあ、このエアポケットに、怒涛のように切れ込んでくるハービーのドラム・フィルインが鳥肌もの!タムタムが実に気持ちよくしばかれ最後のスネアの締めの音が心地良いったら!ここから荒っぽく運動神経のよいハービーのドラムパターンの独壇場になる。スネア、ベードラ、ハイハット、もうみんなしばかれまくりのファンキー大会。ドラムセット自体がずりずり前進しているようだ。このパターンだけを一時間でも聞き続けたいくらい。わくわくするうち、いつしかブレッカー兄弟&サンボーンによる中域がせせりあがったようなホーン・セクションテーマが入り込んできて、最後はくんずほぐれつ海底火山まで突入してゆく。

このアルバムでは、「Rocks」でのホーンセクションのグダグダ空間を切り裂いて登場するハービーのリズム・パターン(Time0:40)も聞き物。クラビネットとざっくりしたハイハットの音がやたら乾いていてこのうえなくタイト!

なんといってもこのアルバムの勝因はハービーの起用だ。だが、ブレッカーの2ndアルバムは、ハービーが法外なギャラでも要求したのか、ドラムに起用されたのは、もう一方の雄、ガッドだった。ファンク度ががぐっと下がって僕としては物足りないことになってしまった。