「月の光浴びましょう」

山本潤子/スモール・サークル 収録

いてもたってもいられない夜、というのがごくたま~にある。
寝付けない、途中で目がさめて心がざわざわする、など。
なにかしら理由が思い当たる場合もあれば、そうでない場合もある。
いてもたってもいられぬ感は後者のほうが強いであろう。

そんなとき、どうするか?お茶をいれてひといきつく。眠るのはあきらめてストレッチする。本を読む。ネットする。いろいろあろうが、いてもたってもいられぬ度が強いと、外へ散歩する、ってことになると思う。
そういうときにアタマの中で流すといいなと思うのがこの「月の光浴びましょう」だ。

詞を書いたのは桜貝ひろいさん、曲は僕。
桜貝さんはことばの断片をたくさんメモしていた。月や空をテーマにしたものが多かった。それらに触発されてメロディが浮かんだ。

僕は東海林太郎のような直立不動スタイルのイメージをこの曲に抱いていた。
はたして山本潤子さんの歌はしなやかな直立不動さを感じさせてくれる。
夜のしじまに、月。そして、ひとり月の光を浴びて立つ人。

何も外へ出なくとも、ふとんの中でこの曲を聴くのもありだ。
月が出る晩ばかりじゃないのだし。
目を閉じて、空に静かに輝く月を思い描く。ふとんの中で感じる月灯りもおつなもの。

このスモール・サークルというアルバムは潤子さんと、僕を含めたバックバンド「てるてるボーイズ」の面々が一緒になって、多摩川べりの小さなスタジオである夏に録音された。
「イントロダクション」は土手の裏の住宅街を潤子さんに自転車でチリンチリン鳴らしながら走ってもらった。何テイクか録ったので、近所の人は豆腐屋の研修かと思ったかも。こういうことをホイホイやってくれる潤子さんは頼もしい。
さらに多摩川の土手で、潤子さんが歌うのを生録した。これは「たまにポカポカしてください」の冒頭の部分。強風と川の対岸で稼動していた芝刈り機の音がかなり混ざってます。

中ジャケットには、その多摩川土手で潤子さんが昨年亡くした愛犬タマと寄り添う見開き写真。
この写真がとてもいい。青い空、緑の草、そして潤子さん&タマ。
潤子さんは、保健所の引き取り手のない犬を集めた施設の隅で震えていたタマを見つけ、家へ連れて帰り育てた。
元気よく尻尾を振っていた犬は選ばず、タマを選んだのです。
同じように、隅っこにいた僕をひっぱりあげてくれて一緒にやろうといってくれた。
とても感謝しています。