バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2

自作のタイムマシーン、デロリアンを駆使して30年後の未来にタイムトリップしたドク博士は、そこで相棒のマーティとその一家がやばいことになっているのをいきなり目撃する。なんぼ友人であっても、そこは科学者、そうなってるのね、ご愁傷様、と自分の胸に納めておいたらいいものを、やってはいけない暴挙に出る。すなわち「現在」に戻るやマーティ本人を引き連れ、再度30年後にトリップ、未来のマーティ一家を救ったろうとするところからストーリーが始まる。

さて、この30年後の未来というのが、2015年という設定でつまり今年だ。リアルタイムで観たあれから30年かと浦島太郎的感慨を抱きつつ、そこに繰り広げられるいかにもな未来図をおおと眺める。車は空を飛び(それでも渋滞があるようだ)、自動フィットの靴と服(自動乾燥機能付き)が普及、地上から浮き上がるスケボーで遊ぶ子供たち。ただ、かのスピルバーグといえども、インターネットの出現は想像できてなかったようで、テレビ電話やファックスの連動やボタンひとつでなんかがでてくる類の未来図を観ながら、当時の「メディアミックス」「ニューメディア」などの死語が浮かび、同時に今日のインターネットに良くも悪くも翻弄される世の中を思う。

で、未来を無事変えて、やれやれと「現在」に戻ってきたら、そこはなんと極悪非道の世の中になっていた!この激変は未来で「スポーツ年鑑」を発見&ゲットし、掛金でボロ儲けしようとしたマーティのアイデアを、そっくり悪党ビフにもっていかれたことによることが判明。未来の老ビフはタイムマシンを使い過去に下り、若き自分にスポーツ年鑑を直接手渡すという、ドクの説に従えばタイムパラドックスで宇宙消滅をも起こしかねないことをやらかすが、そこはなんとなく大丈夫なことになり、結果、ビフは、どんでもない財を築く。政界、警察までも支配下に置き、マーティの父親を殺害、ずっと恋心を寄せる母親ロレインを強引に妻にするという私利私欲の究極形とも言うべきアメリカンドリームを実現させていたのだ。寝て起きて、こんな世の中になってたら・・・と観ていて愕然とし、日常のありがたみを思う。


たまげたマーティは未来に戻ってスポーツ年鑑がビフの手に渡るのを阻止しようと色めき立つが、さぁ、ここでのドクの説明が、この映画の一番おもしろいところだ。
すなわち「この地点から未来にタイムトリップすると、この暗黒支配の続きの未来に行ってしまう」ってこと。つまりタイムラインのどこかで事実変化が生じると、そこからまた別の未来の枝が分かれ出る、というこのドクの説明に、いたく納得、手を打つ。なので、ふたりは若きビフが年鑑をゲットした1955年に戻って、そこでなんとかしないといけなくなり、この奪還劇に PART1の深海パーティーのシーンが重なってきて、面白いことになる。歴史上重大な意味を持ち、富と権力の卵であるところのスポーツ年鑑は、ビフの尻ポケットに押し込まれ、車の座席やダッシュボード、ゴミ箱などにやたら無造作に投げつけられ、カバーの中身を知らないうちにエロ本にされ、ひたすら邪険な扱いを受けつつ物語は進行。それをハラハラドキドキしながら、ああ、あの年鑑欲しい~と邪念を抱きつつ見守る私。ラスト、雨中、過去からの手紙を受け取る名シーンまで息もつかせぬ怒涛のテンポで突き進む。

 

さて、このあとPART3に続くこのシリーズの面白さに、悪党ビフの憎たらしさが大きく貢献していることは言うまでもない。何回も観ているこの作品だが、今回の鑑賞では観ているうちに悪党ビフが不憫に思えた。いつも愛情に飢えているビフはまっすぐだ。ロレインを思う気持ちは表現の仕方こそいびつだがまっすぐだったし、己の気持ちに従い、これまたまっすぐに悪の世界を作り上げた。彼女がちょこっとでもビフを受け入れさえしていたら、こんなことにはならなかったかも。まったく愛されない、認められない、ってのはいつの世でも辛いのだ。

そして、そもそもこのタイムマシーン、行く日時は指定できるが、場所は指定できない。東京でタイムトリップしたら東京のその同じ場所に行く(出現する)ことになる。この作品では1955年から2015年までの60年間、登場人物はみな、同じこの町ヒルデイルで生活し、人生を送っている設定になっていて、だから成立する話とも言える。同じ町で、数家族の三世代が暮らすということは今だったらそうないことだろう。そういう「古き良き時代」の上に乗っかった話だと思った。

 

ちなみに、30年後の2045年、未来の自分がどんなになってるか覗きに行こうとしたとする。今、東京でデロリアンでもってタイムトリップしたとして、未来の東京に自分は…あれ?いない!ひょっとしたら大阪あたりで暮らしているのかしらん、と思った私は、しかるべき交通機関を使って大阪まで行かねばならない。そして!そう、その2045年はリニア新幹線が大阪まで開通しする年。だからタイムトリップしたら、いち早くそれに乗れる・・・わけだが、全然乗りたくない。はたして未来にはそんなもんしか待っていないのだろうか。