不都合な真実 (07年アメリカ)

 

 地球温暖化と聞くと、関西出身の僕はつい反射的に「地球おったんか?」と脳内で置き換えたりするのだが、広大無辺な宇宙からすれば、ちっぽけきわまりない地球の存在など、まさに「おったんか?」という感じなのだろう。

 さて、そのちっぽけな地球での出来事である温暖化はどうやらえらいことになっているようだ。前へ前へとあくなき前進を半ば強迫的に続けてきた人間(アメリカ人的発想の)がついに考え方の変更を強いられるときがきたようだ。ものごとには優先順位というものがある。便利な生活、豊かな食生活、心身への刺激を与えてくれるエンターテイメント、すべて地球の健全な存在が前提にあってこそのもの。その前提がこのままでは破壊され人類は他の生き物を道連れに滅亡への道をたどる筋書きが見えてきたそれも具体的に。

 この映画でいいなと思ったのは、主人公であるゴア前副大統領が、理想や理念のみを頑なに追う人物ではなく、お金もほしい、楽もしたい、家族も愛したい普通の人だという点だというころ。バランスがとれた人がバランスよく考えた結果がストップ・ザ・温暖化であるのだ。映画の中では実に分かりやすく、いかにこの数年で地球の環境が害されているかを示してくれる。グラフがいくつもでてくるが、この数年の人口や二酸化炭素の増え方の急ピッチはまさに加速度がついた暴走車の感あり。こんな車を急停車させるとなにか二次災害が起こりそう。ここは徐々にスローダウンする意識改革が必要かと思われる。

 ただ、今まで好き放題やってきたアメリカや日本などが、これからやっと好き放題できるわい!と盛り上がっている中国に、「二酸化炭素出すのたいがいにしなはれ」、と指図することができるのか?それは無理だと思う。中国にしてみたら、今まで恩恵をさんざん受けてきてなにをムシのいいこと言うとるの?!、である。だからなんらかのアドバンテージを中国などのこれからという国々に与えつつ事をすすめないといけない気がする。

 映画は最期のロールまで席を立つ人がいなかった。これからこんなことをしてくださいという観客へのメッセージが流れているのだ。電気の無駄使いをやめろ、環境に優しい車に乗れ・・・、できることからこつこつと、というかんじでメッセージは続く。で、このエンディングの音楽がなかなかよかった。楽曲が盛り上がってきて、さぁギターソロ、ガーンとくるかと思ったら、さにあらずなかなか控えめな弾きそうで弾かないソロがきて、ああ、地球に優しいソロやなぁとジンときた。

 新しくできた横浜ららぽーとのシネコンでこの映画を見終わり、深夜の巨大な駐車場を歩きながら思う。思えばこの施設もモノにあふれかえる世の中の現在形の縮図。こんな施設で快適にこういう映画を観ているというのもどうなんかと思った。せめていつかはプリウスでも乗らせてもらわないかんかなと、駐車場でプリウスの姿を探してみた。我がぽんこつ車の近くにありましたプリウス。それにしてもデザインがコオロギみたい。