勝手にしやがれ(1959年フランス)

何と言ってもヒロインのジーン・セバーグがいい。ショートカットと笑顔が素敵。ラクダを男前にしたような ジャン・ポール・ベルモントとの絡みがひたすら軽やかだ。それにしてもやたら両者タバコを吸いまくる。部屋も服もタバコ臭でえらいことになってるはず。体 にはちっとも優しくないこの映画は無言部分がいい。登場人物の動きや目の動きだけのカットは躍動感と哀愁が共存していて魅力的だ。加えて、脈絡なく挿入さ れるパリの街風景、部屋に貼られた絵画、ハンフリー・ボガードのピンナップなど、無関係なようで、全部ひっくるめて素敵やね、という印象。

物語りはひたすら断片的進行なのだが、ラストもこれまたぶつっ、と唐突に終わる。回転するレコードからいきなり針を上げたみたいに。そう、この映画はアナログ盤のスピード感がある。それがグルーヴを醸し出し、いつの時代にも若い人に受けるのではないかと思った。

 ジーン・セバーグはこの作以後、あまりぱっとせず、社会運動にも参加し、41歳で自殺したそうだ。ただの美人ではなかったのだ。早死にか隠居か、哲学とプライドを備えてしまった美人の人生の選択肢は意外なほど少ないのかもしれない。